静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

漏洩抵抗による帯電電位の推定

導体が完全に絶縁されていない場合,導体はある漏洩抵抗を持つ.このときの導体の帯電電位は,何らかの電荷発生によって導体に流れる電流をとすると (6.1) により求めることができる.たとえば,帯電液体 C/kgを毎秒 kg(流量 kg/s)で金属容器(漏洩抵抗)…

火花放電エネルギー

火花放電は導体が帯電あるいは静電誘導により起こる放電であり,火花放電エネルギーはその導体に蓄積されている静電エネルギーにほぼ等しい.そのエネルギーは式(A.7) により求めることができる.さらに,この放電エネルギーが可燃性雰囲気の着火エネルギー…

火花放電の着火性

火花放電の着火性はつぎの事項を調査して見積もることができる. 火花放電エネルギー 漏洩抵抗による帯電電位 火花開始電圧との比較 静電容量 放電ギャップ長と消炎効果 人体からの火花放電 つぎから順に解説します.

火花放電の発生条件

火花放電の詳細はA.3.6に示しているが,火花放電の発生条件を簡潔に列挙すると以下のとおりである. 平板または大きな曲率半径の導体間に平等電界が形成されて起こる(放電ギャップの形成) この電界が空気の絶縁破壊電界(3 MV/m)以上である 産業現場でこの…

火花放電ハザードの同定

チェック項目26 火花放電の可能性と着火性 静電誘導ハザード同定により,火花放電が可能となる絶縁導体(静電誘導ハザードと同定された電荷消散性物体も含む)が特定できているので,対象の可燃性雰囲気に対応させて,これらの絶縁導体からのこの火花放電の…

静電気放電ハザードの同定法

帯電および静電誘導ハザードの同定により帯電と静電誘導の状況が把握できているので,これをもとに放電生起の可能性を調査する.ここでは,起こりうる放電タイプを調査することによって放電ハザードを同定する. 産業現場で起こる静電気放電のタイプには, …

静電誘導ハザード同定シート

静電誘導ハザード同定のためのシートを用意している.表2.2の静電誘導ハザードの同定部である.この表は,ここに示した静電誘導ハザード同定の手続きをまとめたものである.メモ欄には調査結果および除外の根拠,注釈,使用した測定法,参考文献など必要な事…

静電誘導ハザード同定のまとめ

導体の非接地による火花放電着火が最も多い事故事例である.このガイドにしたがって入念に調査されれば,抜けがなく同定されているはずである. 静電誘導ハザードレベルは表4.6の帯電レベルが低の行を用いる.絶縁導体は導電性で電荷漏洩がないので,静電誘…

漏洩・噴出の危険性のある場所の導体

漏洩・噴出による着火は噴出時に発生した電荷の静電誘導による火花放電が原因となることが多いので(付録E),漏洩の危険性がある場所(内圧の高いフランジ・バルブ・結合部など)の周辺にある絶縁導体(作業者含む)ついても同様な調査を実施する.

静電容量

チェック項目25 静電容量による絞り込み 小さな導体(たとえば,ねじなど)もすべて接地・ボンディングするのは現実的ではないが,小さな導体からの火花放電エネルギーは小さいので静電誘導ハザードとはならない.また,可燃性雰囲気がZone 2/22では周辺の帯…

放電ギャップの形成

チェック項目24 絶縁導体が導体(おもに接地導体)との間に放電ギャップを形成するか 火花放電が生ずるためには,絶縁導体と接地導体で形成されるごく短い放電ギャップが必要である.したがって,絶縁導体が接地導体に近づく,逆に接地導体が絶縁導体に近づ…

静電気対策品の接地

チェック項目23 接地が必要な静電気対策品の接地が確実になされているか 接地が必要な静電気対策品(粉体用の用品に多くみられる.たとえば,FIBC,バグフィルタなど)は接地されていないと電荷緩和やシールドなど,それが持つ機能が働かなくなるので帯電・…

導体および人体の漏洩抵抗

導体および人体の漏洩抵抗を測定して,以下のチェック項目を調査する. チェック項目21 漏洩抵抗が106 Ωを越える導体はないか チェック項目22 人体の漏洩抵抗が108 Ωを越えていないか 通常,固定されたタンクなど設備に相当する導体は電気安全の観点から接地…

漏洩抵抗

導体を接地しないと帯電した物体からの静電誘導により電位が生じて帯電ハザードと同様な状態,つまり,静電誘導ハザードとなり,火花放電のハザードとなる.接地・ボンディングは静電気対策の基本であるが,70%超の静電気事故の原因は導体・人体の非接地(絶…

絶縁導体の例

接地・ボンディングを忘れがちな,そして,事故事例に多い絶縁導体を挙げる.静電気放電が発生するおもな原因は絶縁導体(作業者も含む)による火花放電であり,その割合は71.1%であった(付録E).この絶縁導体と接地導体とのごく短い間隙で空気の絶縁破壊…

絶縁導体の洗い出し

チェック項目20 絶縁導体はないか 特定された帯電物体周辺に絶縁導体がないか,あるいは,この周辺に持ち込む導体(作業者も含む)はないか調査する.電荷消散性の物体も接地・ボンディングしていないと火花放電ハザードとなるので,これも調査する.

静電誘導の要因となる帯電

チェック項目19 静電誘導の原因となる帯電場所を特定する その場所は帯電ハザード同定ですでに特定できている.

静電誘導のハザード同定

静電誘導ハザード同定の流れは次のようになる(図5.1) 静電誘導を起こす電場(帯電物体)があるか 絶縁導体があるか 絶縁導体と導体(おもに接地導体)で放電ギャップを形成しうるか 可燃性雰囲気の着火性と形成頻度および絶縁導体の静電容量により静電誘導…

静電誘導ハザード

事故事例分析(付録E)から静電気着火事故の70%強は絶縁導体からの火花放電である.換言すれば,導体を接地していれば70%強もの事故を未然に防止できていたということである.対策も接地・ボンディングという簡単な方法であるので,可能な限り絶縁導体という…

帯電ハザード同定シート

帯電ハザード同定のためのシートは表2.2の帯電ハザードの同定部である.この表は,これまでに示した帯電ハザード同定の手続きをまとめたものである.メモ欄には調査結果および除外の根拠,注釈,使用した測定法,参考文献など必要な情報を記載するとよい.帯…

帯電ハザードレベル

絶縁性固体,液体および粉体の帯電ハザードは電荷緩和で同定した抵抗率・導電率を高・中・低にクラス分けする.ここで,液体・粉体などが絶縁性容器・配管・袋などで取り扱われると液体・粉体は絶縁状態となり,ハザードが高くなるので,配管などの固体の抵…

帯電ハザード同定のまとめ

この帯電ハザード同定で,電荷が蓄積されている場所が特定できているはずである.高導電率(低抵抗率)の材料に代えるなどの静電気対策を施して十分にリスクが低減できると予測できないときは,この特定された帯電により生起する静電誘導ハザード同定(5章)お…

帯電促進要因の調査

何らかの帯電促進要因がある場合はこれを加味して,帯電ハザードのレベル分けをする(表4.6) チェック項目18 帯電を促進させる要因はないか 帯電促進要因の例を以下に示す. 高速輸送など:たとえば,液体の流速制限以上の速度,高速撹拌,粉体の空気輸送な…

粉体の帯電ハザード

粉体の抵抗率と電荷緩和 チェック項目17 諸特性による粉体の帯電性の調査とバルク抵抗率による帯電レベルの同定 粉体の電荷緩和はそのバルク抵抗率に依存するので,抵抗率が高いほど帯電しやすくなる.抵抗率によって粉体を表4.4のように分類する.これに対…

液体の帯電ハザード

液体の導電率と電荷緩和 チェック項目16 導電率による液体の帯電性調査と帯電レベルの同定 液体の配管輸送,撹拌など液体が異種の物質(液体,固体)と接触している場所では電荷分離により液体が帯電している.この電荷分離は,液体中の正・負どちらかのイオ…

固体絶縁物の帯電ハザード

固体絶縁物の抵抗率と帯電性 チェック項目15 帯電ハザードとなる絶縁性固体を抽出し,抵抗率により帯電レベルを同定する 物体の抵抗率が高いほど電荷緩和は抑制されるので,抵抗率によって帯電ハザードのレベルを同定する.表4.2の絶縁性物体は接地しても電…

電荷緩和による帯電ハザード同定

帯電は電荷緩和によって抑制されるので,電荷緩和によって帯電ハザードを同定する.この電荷緩和は漏洩抵抗に依存する.設備,容器,道具,人体などの導体や静電気対策品の接地が規定抵抗以内になっているか,また,使用している物質を固体,液体,粉体に分…

帯電ハザードの絞り込み

4.2 帯電ハザードの洗い出しで抽出された帯電ハザードが着火ハザードとならない場合が多い.ここでは,可燃性雰囲気と静電気対策の状況を照合させて帯電ハザードを絞り込む. 可燃性雰囲気形成ハザードとの照合 チェック項目13 可燃性雰囲気形成ハザードと合…

帯電ハザードの洗い出し

帯電ハザードとなりうる物体をすべて抽出し,その場所を特定する. チェック項目10 電荷分離が起きていて,電荷緩和が小さい物体・場所の洗い出し チェック項目11 帯電したものが相当量蓄積されている物体・場所の洗い出し チェック項目12 チェック項目10, 1…