静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

フィルタ,濾過器,水分分離器

[ハザード]

  1. フィルタ,濾過器および水分分離器での液体の流動は,通常の配管流動よりも液体を著しく帯電させる.
  2. たとえば,配管での帯電が10 𝜇C/m3程度でも,マイクロフィルタ(30 𝜇m以下)では,5000 𝜇C/m3を超える.
  3. 粗い目のメッシュなどのフィルタ等(150 𝜇m以上)では高帯電になりにくいが,部分的に詰まったりすると通常の配管流動よりも液体を著しく帯電させる(100 𝜇C/m3のオーダー).圧力監視によって部分的な閉塞をモニタリングするとよい.
  4. 下流のタンク・容器などで,可燃性雰囲気が形成されるとこの帯電により着火ハザードがある.
  5. 充てん容器直近でのフィルタ,濾過器,水分分離器の設置は,液体の電荷が十分に緩和されず,かつ,フィルタも帯電しているので,さらなる帯電ハザードとなる.

[確認事項・リスク低減策]

次のような対策がなされているか確認する.

  1. フィルタ等の導体部およびすべての導体は接地・ボンディングする.
  2. フィルタ容器および緩和チェンバーを用いるときは,これらの内部に可燃性雰囲気の形成を防止するため,これらを常に液体で充満させるようにする.
  3. タンク・容器内部に可燃性雰囲気が形成される可能性がある場合,液体の滞在時間を緩和時間(𝜏: 液体の誘電率 / 導電率)の3倍(3𝜏)以上確保するように,タンク・容器から緩和長(3 v𝜏)以上の位置にフィルタ等を設置する.
  4. 著しく低導電率な液体または導電率が不明な液体は以下のような滞在時間を確保して,電荷緩和させる.なお,これらの滞在時間は,3𝜏と比較して短い方でよい.
    1. 30 𝜇m以下のフィルタ: 100 s
    2. 30-150 𝜇mのフィルタ: 30 s
    3. ただし,30-150 𝜇mのフィルタで,流動に閉塞が起こりやすい場合: 100 s
  5. 粗い目のメッシュなどのフィルタ等(150 𝜇m以上)では高帯電を発生しないので,フィルタが部分的につまらない限り,上のような特別な滞在時間を設ける必要がない.
  6. やむを得ず滞在時間を確保できない場合は,添加剤などで導電率を高め滞在時間の短縮させるか,可燃性雰囲気の形成を防止する.
  7. 油と水など2つ以上の相が存在するとき,充てんが終了した後の相の分離(たとえば,沈降帯電),つまり,電荷の発生が,3倍の電荷緩和時間よりもはるかに長く続く可能性がある.このような場合,サンプリングなどの作業を行う前に30分以上の遅延が必要である.
  8. 高粘性液体の場合は,滞在時間の対策は適さないので,受け入れタンク内に可燃性雰囲気の形成を防止する.
  9. 浮き屋根または浮きカバー備えたタンク充てんにフィルタなどを用いる場合は,浮き屋根が浮くまでの速度制限1 m/s以下に合わせて滞在時間(フィルタ等の位置)を決定する.この場合,浮き屋根が浮いてしまえば,着火ハザードはなくなる.
  10. 容器直近のフィルタは,可燃性雰囲気では使用してはならない.