静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

小型導電性容器

小型導電性容器はドラム,バケツ,ペール缶,IBC (Intermediate Bulk Container)などで金属でできていて,絶縁性コーティングがされていない容器である.容器サイズのクラス分けの小型については表10.1を参照.

[ハザード]

小型導電性容器には次のようなハザードがある.

  1. 接地により適切な漏洩抵抗が確実にとられるようにしないとハザードとなる.可搬性があるため接地・ボンディングを忘れて事故になることが多い.また,いくつかの容器を順(直列)にボンディングによって接地しているのを散見する.途中でひとつでもボンディングを外す(が外れる)と,接地されない容器が出てきてしまうので,このような接地方法は避ける.
  2. フィルタの使用は帯電を促進させて帯電ハザードとなる.直近でのフィルタの使用が帯電の原因となった事故事例がある.使用する場合は緩和長を確保する.
  3. スプラッシュローディングは帯電ハザードとなる.
  4. 接地導体(作業者も含む)が近づくことによる低導電率液体の液面でのブラシ放電のハザードがある.
  5. 容器自体またはドラムポンプ,漏斗などの絶縁(非接地)による火花放電のハザードがある.
  6. 絶縁された作業者も静電誘導により,火花放電の原因となる.

[確認事項], [リスク低減策]

次のような静電気対策があるので,確実になされているか確認する.

  1. 充てん・排出中はすべての導体(電荷消散性の物体および作業者も含む)を接地・ボンディングする: 絶縁導体(たとえば,金属製の漏斗やノズル)からの火花放電の事故が多い.
  2. 絶縁性の漏斗は使用しない.プラスチック製のものは,電荷消散性の材料にして,接地・ボンディングする.
  3. 不溶成分のない液体の小型タンク・容器への充てんでは,中型タンク・容器の速度制限を超えてはならない.実際にはこれらの制限は小型タンク用の充てん装置の限界を遙かに上回ることから,小型タンク充てん装置はこの速度制限を満たしている.明示的な流速制限が必要であれば,2 m/sの最大流速を越えないようにすることを薦める.
  4. 導電率が低く,着火性が高い液体,例えば,二硫化炭素,ジエチルエーテル有機過酸化物,エチレンオキサイドなど最小着火エネルギーが0.2 mJ未満の液体は流速を1 m/sを越えないようにする.
  5. 不溶物質が混在する中・低導電率液体では1 m/sを超えない流速とする.
  6. ディップパイプなどを用いて液面上部から充てんしないようにする.
  7. 作業者人体の接地を靴と床の漏洩抵抗で確保する.
  8. フィルターの設置位置は十分な緩和長を確保する.