静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

流速制限

液面電位または液体の帯電はタンクの大きさ・形状**,中心導体柱の存在(中心導体柱は最大電位を下げる),液体の性状,タンクが固定か可動か等に影響するので,流速もこれらに依存する.

[確認事項]

液体流動の帯電を抑制させるためその速度を制限する対策があるので,これを満たしているものは液体流動による帯電ハザードは許容できるほど低いとしてよい.ただし,以下に示す値は最大許容速度を示している.

流速制限は,タンク上流の電荷緩和長内の配管に適用する.この電荷緩和長は30秒の滞在時間または緩和時間の3倍の短い方を用いて求める.分岐した配管系では,最大速度となる配管に適用する.

  1. 大型タンク・容器の流速制限は1 m/s以下または7 m/s以下であり,固定・浮き屋根,初期充てん速度,液体の性状に依存する.詳細は10.8.3 大型導電性タンクを参照
  2. 中型タンク・容器の流速制限は,大型のものと同様だが,不溶成分のない液体では,タンク高さ・直径の条件式(10.6)および実行緩和時間の条件式(10.7)を満たすとき,流速制限の式(10.5)を適用できる.詳細は10.8.4 中型導電性タンクを参照.このような条件なしに,タンク形状・寸法,配管径,液体の導電率,誘電率によって,充てん中の液面電位を25 kV以下にするための流速を決定できる数値計算を提供しているので,相談されたい.
  3. 小型タンク・容器の流速制限は,中型のものと同様だが,中型タンクの制限式は小型タンク用の充てん設備の能力を超える流速である.事故の頻度の割合から不溶成分のない液体では,最大流速を7 m/sから2 m/sに制限することを薦める.最小着火エネルギーが0.2 mJ以下の液体を取り扱う場合は流速を1 m/s 以下にする.詳細は10.8.5 小型導電性タンクを参照.
  4. 導電率に拘わらず,液体の輸送の最大流速は7 m/s
  5. 充てんの初期最大流速は1 m/s
  6. 低・中導電率の二相液体(水滴,固体などの不溶物質が混在した液体)の最大流速は1 m/s
  7. 絶縁性配管・容器(ライニングも含む)を使用する場合の最大流速は1 m/sとする.なお,低導電率液体には絶縁性配管・容器は使用しない.また,高導電性液体では液体が絶縁導体となり,火花放電のハザードとなる.

**容量が3から10 m3程度のタンクの電位が最も高く,これと比較して一般に,より大きい,または,より小さいタンク,水平方向に長いタンク,高さより断面の長さが長いタンクの方が電位が低くなる.