液体の配管輸送
チェック項目36 液体流動の帯電性調査
液体が配管等を流れるとき,液体と壁との境界には必ず電気二重層を形成して,一方の極性の電荷は液体とともに流れ,他方の電荷は壁に残る.この帯電量はパイプと液体の導電性のほかに,流速,配管径などに依存する.接地した金属配管内の液体とともに流れる電流は
(10.1)
なる関係[11]が実験的に求められている.ここで,は配管の長さ,は液体の電荷緩和時間(, : 液体の誘電率と導電率)である.導電率が低い液体,配管の長さが十分に長いなど()で指数関数の項を無視できる場合(),この式から電荷密度が流速に比例する式
(10.2)
を導くことができる.実際に静電気対策に用いられている流速1-7 m/sは液体の電荷密度では約5-35 𝜇C/m3の範囲にあることがわかる.また,の長さの配管は無限長の配管と同じと考える.
式(10.1)はSchönの式として知られており,規格等[2-5]に用いられてきた.流動電流はの関係があり,Schönの式ではで近似され,配管径に依存しない電荷密度の式(10.2)となる. 最新の規格IEC 60079-32-1 [36]では,とした流動電流式[32]
(10.3)
採用がされ,液面電位を25 kV以下にするための条件式(10.5)の導出に用いられている.この流動電流式では配管径にも依存する電荷密度の式
(10.4)
を得ることができる.本書でもこれを採用している.
[ハザード]次の事項は電荷分離を促進または電荷緩和を抑制するので帯電を促進してさらにハザードとなる
- 絶縁性配管の利用
- 二相液体(水滴,固体などの不溶成分の混在)
- マイクロフィルタ⇒対策として,フィルタの設置位置は排出口から長さ以上の緩和長が必要
- 高流速