液体充てんの一般的なリスク低減策
液体のタンク充てんの一般的な静電気対策は次のとおりである.主に液体充てん中の電荷蓄積を抑制するための対策である.
- 接地・ボンディング:容器やタンクは当然のことであるが,浮き屋根,パイプ,ポンプ,フィルタ,ホースなど付随するものすべての導体は適切に接地・ボンディングする.
- 大・中型のタンクなど固定された設備の接地抵抗は10 Ω以下が望ましい.
- ホースを用いる場合は導電性のものにしてボンディングにより接地する.
- 火花放電の原因となるので,液面に浮いた導体(ゲージフロート,サンプル用の容器など)がないようにする.
- バケツなど可搬型の金属製容器は接地・ボンディングを確実にしないための災害が多いので注意する.
- 作業者の静電気対策 作業者(人体)の接地と作業服の帯電防止
- 可能であれば,低導電率液体の帯電防止剤(static dissipative additives: SDA)添加による導電化
- ボトムローディング,ディップ(ドロップ)パイプなどで液体の飛散・噴出(スプラッシュローディング)を避ける
- タンクや容器上部からの充てん(トップローディング)は液体の飛散・噴出や液面での跳ね返り,泡の発生(スプラッシュローディング)などにより帯電の促進となるので,パイプをタンク下部まで下げる(ディップパイプ).このときタンク下部には接触しないようにする.また,飛散防止のため液流をタンク底に対して水平方向にする45度のディップパイプの先端あるいはそのために先端にT字管を設けるとよい.
- あるいはタンク下部から充てんする(ボトムローディング).このとき,上方向の噴出やミストの生成を避けるようにタンク壁の方向に流入するようにする.このためにパイプの先にT字管などを設けてもよい.
- ディップパイプの先が液面下0.6 mまたは管径の2倍まで満たされるまでは流速を1 m/s以下に制限する.
- スプラッシュローディングが工程上必要なときもあるが,この場合は,
- 充てんパイプをタンク壁近くに配置し,鉛直方向に対して15度から30度にタンク壁に向けて液体が充てんされるようにする.
- 充てん速度は対応する速度制限の50%または2 m/s以下にする.
- 充てんパイプの先端からの放電を防止するため,先端を液面より200 mm以上離れるようにする.
- 安全のため配管内の最大流速は中・高導電率液体でも7 m/sを超えないことを推奨する.
- 不溶物質が混在する液体では,流速を1 m/s以下に制限する.
- 水に混ざらない液体を取り扱うとき,タンク底部に水の層が形成されるおそれがあるので,これを取り除くために,大・中型のタンク・容器ではタンクの低部または底部に水抜きドレインを設ける.
- 電荷発生の原因となるので水などの沈降層をかき混ぜないように充てんする.これを防止するのが,ディップパイプ先端が満たされるまで1 m/s以下の流速制限に相当する.
- タンク内にある液体よりも低密度の液体を入れると,表面電位を高くするおそれがあるのでこれを避ける.同様な理由で,タンク内にある液体よりも温かい液体を充てんしないようにする.空気等気体が混在した液体をタンクに導入しないようにする.これらが避けられない場合は流速を1 m/s以下にする.
- フィルタ,ポンプなどは電荷発生を促進させるので,十分な緩和長()を確保して設置する.
- タンク中心付近に上から下までの柱状の接地導体または金属網を設けると,液面の電位上昇を抑制できる.