静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

中型導電性タンクー固定タンク

中型導電性タンクは,固定タンク,タンクローリー・タンク車および航空機充てんに分けて説明する.

10.7のの充てんのハザードおよび10.8.1のタンク・容器の一般的な対策を確認する.

流速制限

中型タンク・容器では,流速制限は10.7にあるとおりだが,不溶成分のない低導電率液体の流速制限については垂直軸と水平軸タンクで分ける.垂直軸タンクの流速制限の式は,以下のように表されることをモデル計算により求められている[33,34].

(1) 中型垂直軸円筒または正方形断面**タンク(1.3 m < D ≤ 10 m)

(10.6)   v \le 0.7 \sqrt{D/d} m/s

この流速制限の式は,高さHと直径D

(10.7)   H/D \ge 2/3

を満たすタンク***および実効緩和時間

(10.8)   \tau_{eff} = 2 \tau =2\varepsilon/\sigma \le 12  s

の液体に対して最大液面電位を25 kV以下にする.したがって,この流速では,液面での着火性ブラシ放電を防止することができる(A.3.8.2).多くの液体の比誘電率は約2であるので,式(10.8)から,導電率が3 pS/m以上の液体に適用できる.したがって,H/D \ge 2/3を満たさないタンクや導電率が3 pS/mよりも低い液体では適用できない.ここで,dは配管径であり,正方形断面では断面積Sから求まる等価直径D=2\sqrt{S/\pi}を用いる.この式を満たしていても経験的な最大流速v=7 m/sは超えてはならない.

この流速制限(10.6)には上に示したように,タンクサイズ,寸法,および液体の緩和時間の適用条件がある.また,これらの広い範囲をタンク直径と配管径のみを用いた一つの流速制限式で表しているため,この流速制限では安全マージンが大きすぎる(過大評価となる)こともある.しかしながら,この流速制限を求めるための最大液面電位の計算には上記に示した条件は不要であり,現場に適合したオーダーメードの流速制限も可能となる.任意のタンク形状(垂直円筒・矩形タンク)・寸法,配管径,液体の誘電率,導電率を入力して,充てん中の最大液面電位を数値計算するコードを用意しているので相談されたい.

 

** 正方形断面とは辺a,bの比a/bが1.5を越えない長方形断面のこと.

*** このH/D \ge 2/3とき,液面電位はタンクの高さに依存しなくなる.