静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

静電誘導ハザード

事故事例分析(付録E)から静電気着火事故の70%強は絶縁導体からの火花放電である.換言すれば,導体を接地していれば70%強もの事故を未然に防止できていたということである.対策も接地・ボンディングという簡単な方法であるので,可能な限り絶縁導体というハザードの抽出抜けをなくすために,この火花放電の原因である静電誘導のハザード同定を4章の帯電ハザードの同定から分けて設けることにした.

電場中(たとえば,帯電した物体の周辺)に絶縁された導体があると,この導体は静電誘導(付録A.2.6)によりある電位を持つ.このとき,この導体の近くに接地された導体があり,その接地導体との間の電界が空気の絶縁破壊電界以上になると火花放電が生じる.この火花放電が可燃性雰囲気で起き,放電エネルギー(静電エネルギー)W\ (=\textstyle{\frac{1}{ 2}}CV^2, C: 絶縁導体の静電容量, V: 誘導電位)が雰囲気の最小着火エネルギーW_{mie}よりも大きい( W \ge W_{mie})と着火する.つまり,導体の静電誘導ハザードは火花放電ハザードとなり,これが原因として着火ハザードとなる.

導体が絶縁されていなくても,その漏洩抵抗が大きく,電荷発生が定常的に起きる場合に導体に電位を生じて火花放電が発生する可能性があるので,このハザードについても火花放電防止の漏洩抵抗(式A.12)よって導体の漏洩抵抗を調査する.