液体の帯電ハザード
液体の導電率と電荷緩和
チェック項目16 導電率による液体の帯電性調査と帯電レベルの同定
液体の配管輸送,撹拌など液体が異種の物質(液体,固体)と接触している場所では電荷分離により液体が帯電している.この電荷分離は,液体中の正・負どちらかのイオンが選択的に界面に集まることによって起こる.液体が接地した導体に接触しているとき,この発生電荷は電荷緩和により消滅していく.この電荷緩和は液体の導電率に依存する(導電率が高いほど電荷緩和は大きくなる)ので,この導電率によるクラス分け(表4.3)によって液体の帯電レベルを同定する.
種々の液体の導電率は表G.6を参照されたい.
この電荷緩和を利用した対策が流速制限および静置・滞在時間である.
高導電性液体は,接地した導体と接触しているとき(たとえば接地タンク・配管での液体輸送),帯電ハザードから除外できる.
例外として高導電率の液体でも,帯電ハザードとなるときがある.液体が接地された導体に接触していないと,たとえば,絶縁性ホース,容器を用いていると,電荷緩和がなくなるので,導電率が高い液体でも,帯電ハザードのレベルは高くなる.また,放電が起きたとき,導体同士の放電(火花放電)と同様になり,放電エネルギーが高くなるので,放電の着火性は低導電率液体を絶縁性ホース・容器で取り扱っているときよりも高くなる.したがって,液体が容器等で絶縁される場合は,固体(容器)の抵抗率により液体の帯電ハザードレベルを同定してもよいが,これは,表4.6の電荷漏洩なしに相当する.結果的には液体の導電率と電荷漏洩の有無の組合せとなる.
静電気対策が適切になされている場合は,帯電ハザードはなしとする.また,高導電率の液体が接地された容器,配管などで電荷漏洩され,電荷蓄積がない場合も帯電ハザードはない(表4.6).ただし,噴霧などの帯電促進要因がある工程はこれに当てはまらないので注意されたい.
工程・作業ごとの液体の詳細なリスクアセスメントは10章を参照するとよい.