静電誘導と導電率ーつづき
前(2022年12月12日)に静電誘導と導電率の関係,つまり,電荷緩和時間に応じて誘導電荷が現れることを示した.このとき,静電誘導が現れる物体は接地しているとした.ここでは,この物体が絶縁されているとして計算する.
物体が絶縁されている場合
図3aに示すような一次元モデルで考える.これの等価回路は3bのようになる.電圧から距離離れた位置に,厚さの物体がある.この物体の誘電率は,抵抗率はとする.物体は接地から距離離れて絶縁されている.この物体の初期表面電荷は0であり,帯電されていないとする.このとき,物体と空気の界面での表面電荷密度およびを求める.ただし,
(8)
の関係が成り立つ.それぞれの界面での電荷保存式から,つまり,等価回路からも
(9)
となる.電圧は
(10)
式(10)の時間微分で,で,式(9)のより,
(11)
を得る.これを式(9)に代入して
(12)
を得る.ただし,
(13)
である.で物体の上下とも表面電荷密は0であるから
(14)
これを式(10)に代入して,の初期値は
(15)
したがって
(16)
また,およびの初期値は
(17)
ここで,とは初期値が等しく,時間微分も等しいので,
(18)
である.これは,式(8)の表面電荷密度の関係からも明らかである. 式(11)から
(19)
とおいて,式(16)と式(17)から
(20)
したがって,
(21)
よって,求める表面電荷密度は
(22)
となる.
静電誘導が現れるまでの時間は,接地した場合と同様であり,抵抗率との関係は図2で表される.つまり,抵抗率の選定により,導体と同様な静電誘導電荷が現れるまでの時間が遅延し,火花放電を防止できることを示している.