静電誘導と抵抗率
静電誘導は導体に関わる静電気現象である.導体の自由電荷(固体導体だと自由電子)が外部電界のよって表面(理想的な導体は導体内部の電界は0)で移動し,結果として表面で鉛直方向の電界のみが現れ,表面で同電位にする表面電荷分布となっている.つまり,静電誘導は自由電荷の移動現象によるので,要する時間は電荷緩和時間,つまり,誘電率および抵抗率(導電率)に依存する.静電誘導の抵抗率(導電率)との関係を理論的に示す.まずは,簡単に一次元モデルで考えてみる.
一次元モデル
図1aに示すような一次元モデルで考える.これの等価回路は図1bのようになる.電圧から距離離れた位置に,厚さの物体がある.この物体の誘電率は,抵抗率はとする.物体の反対側は接地されている**.このとき,物体と空気の界面での表面電荷密度を求める.この界面での電荷保存式から
(1)
電圧は
(2)
式(1), (2)より,また,でであるので,
(3)
ただし,
(4)
ここで,は比誘電率である.でであるので,式(2)より,,でなので,
(5)
これを式(2)に代入して
(6)
(7)
導体と同じ(99%)静電誘導電荷となるためには,の時間がかかる.抵抗率1010 Ω mを越えると,この時間は,数秒以上かかることになる.図2に抵抗率と誘導電荷が現れるまでの時間の関係を示す.このことは,以内の時間にこの物体を動かすことがあれば,導体と同様な静電誘導は起きないことを示している.つまり,そんなときは火花放電は起きないということだ.
**計算を簡単にするために接地とした.絶縁する場合は下側と接地の間に空気層を挿入するモデルにする.