災害事例にみる静電気着火ハザード
事故は実際に起きたことであるので,事故事例に学ぶことは重要であり,ハザード同定にも役立つであろう.以下に示した項目の他に,付録Fでは過去50年間(1960--2010)の静電気災害の分析結果を事故に学ぶハザードとして示しているので参照されたい.
また,静電気放電ハザード同定のハザードレベルに事故頻度を考慮している(6.8)ように,この事故分析結果は静電気着火リスク分析に応用されている.
- 次の帯電や静電誘導は過去に災害の原因となった事例である.
- 高速で走行するフィルム・紙・布などの帯電
- 液体,粉体などを収納する絶縁された金属製容器・金属部分の静電誘導
- 絶縁性パイプ・ホースの一部に取り付けられた金属物体の静電誘導
- バグフィルタ,シュートなど繊維製品の帯電
- ノズル,ホース,パイプなどから噴出した絶縁性液体の帯電
- 絶縁性履物または絶縁性床によって絶縁された作業者の帯電や静電誘導
- タンク,大型容器などに充てんされた絶縁性液体の帯電
- 混合・撹拌されている液体の帯電
- 次の工程は過去に災害の原因となった事例である.
- 可燃性液体が入っている容器に粉体などを投入する工程
- 接着剤,塗料,インキ,溶剤などを塗布・印刷する工程
- 溶剤を含む粉体を流動乾燥させる工程
- 溶剤・塗料などを吹き付け・塗装する工程,および溶剤を使用して洗浄する工程
- 可燃性液体を採取・検尺・検温する工程
- プラスチック成型品を型から取り外す工程
- フィルム,紙,布などを巻き取り・巻きもどす工程
- 接着剤を使用して張り付け・張り合わせる工程
- 可燃性液体をタンク,容器などに移し替え・充てんする工程
- 多量の粉体類を輸送・流動させる工程
- 粉体の空気輸送,集じんなどで,微細粉じんが発生する工程
- 粉体類を袋詰めする工程
- フレキシブルコンテナで多量の粉体類を取り扱う工程
- 樹脂を発泡し,成型する工程
- 異種の粉体を高速混合する工程
- 次の放電は過去に災害の原因となった事例である.
- 帯電した,または,静電誘導を受けた金属物体からの放電:火花
- 接着・密着したものを剥離するときに発生する放電:ブラシ,沿面
- 絶縁性のバグフィルタ・シュート・配管・袋などに付着した粉体が剥離するときの放電:ブラシ
- プラスチック成型品を型から取り外すときに発生する放電:ブラシ
- 帯電した,または,静電誘導を受けた作業者からの放電:火花,ブラシ
- 作業服などの脱衣時に発生する放電:ブラシ
- 試料を採取した金属容器からの放電:火花,ブラシ
- 絶縁物に取り付けられた(置かれた)金属部分からの放電:火花,ブラシ
- 除電器の動作不良・メンテナンス不足または使用方法の誤りによって発生する放電:火花,ブラシ
- 脱ガス不足のペレットの空気輸送により充てん金属容器内の堆積粉体表面で起こる放電:ブラシ,コーン
- 次の状態・条件は過去に災害の原因となった事例である.
- 施設,装置,機器などを初めて運転したとき,または改修・メンテナンス後に運転を再開したとき
- 運転条件を変更したとき
- 相対湿度が極端に低下したとき
- 施設,装置,機器などが故障して作動状態が急変したとき
- 材料,原料などに異物が混入したとき
- 作業基準の変更が適切に行われなかったとき
- 除電器のメンテナンスが十分でなかったとき
- 装置,機器などの操作を誤ったとき