静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

液体取扱の一般的なハザードー帯電ハザード

チェック項目32 電荷発生を促進させる要因はないか

チェック項目33 電荷緩和を抑制させる要因はないか

[ハザード]

帯電の促進は電荷発生の促進と電荷緩和の抑制によるので,それぞれを調査する.

  1. 接地と絶縁導体
    1. 金属タンク・配管などの大きな導体から作業者が用いる道具などの小さな導体まで,これらが電気的に絶縁されると火花放電のハザードがある.したがって,これらは適切に接地されなければならない.
    2. タンク内の導体(特に,液面に浮いたもの),可搬導体(容器,計量器,台車,踏台など)および作業者が取扱う道具などが絶縁されることによる事故事例が多い.
    3. 高・中導電性液体は導体・電荷消散性物質であるので接地が必要である.
  2. 電荷発生を促進させる要因
    1. 配管輸送,充てん,混合,撹拌,噴霧,洗浄など液体の流動が伴う現象は電荷分離が起きるので,帯電ハザードとなりうる.帯電を抑制させる静電気対策が必要となる.
    2. 電荷発生を促進する要因として,たとえば,高流速,フィルタ,スプラッシュローディング,二相液体(不溶成分を含む液体),噴霧などがある.
  3. 電荷緩和を抑制させる要因
    1. 液体の電荷緩和は導電率に依存するので,導電率が低くなると帯電電荷を長い時間維持する.
    2. 液体が接地に電気的に(接地した導体に)接触していないと電荷緩和はないので,液体の帯電は維持されるか促進する.絶縁性コート(以下,コートはライニング,ライナー(絶縁性内袋)も含む)および絶縁性容器・配管などがこの要因となる.

[確認事項]

  1. 導電率(4.4.2.1)
    1. 液体が接地した導体と接触していると,電荷緩和によって帯電が抑制される.
    2. 導電性・電荷消散性(高・中導電性)液体が接地されないと,絶縁導体となり,静電誘導ハザードとなる.したがって,高・中導電性液体は常に接地に接触するようにして火花放電を防止する.
    3. 電荷緩和は導電率が高いほど大きく(電荷緩和時間が短く)なり,帯電ハザードは低くなる.
    4. 帯電レベルの見積は導電率のクラス分け(表4.3)を用いる.
  2. 帯電促進要因
    1. 電荷発生の促進および電荷緩和の抑制要因の調査
  3. 電荷緩和
    1. 3𝜏以上**の液体が接地される滞在時間が確保されているか確認する.

帯電のハザード同定の詳細は4章を参照.

** 緩和時間𝜏 (= 𝜀 / 𝜎)を活用して,液体が接地に接触する時間を3𝜏以上確保すると液体電荷を緩和できる.3𝜏は初期電荷の95%が緩和されるまでの時間である.これがフィルタによく用いられる緩和長や充てん後の静置時間に相当する.