静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

液体取扱の一般的なハザードー液体蒸気による可燃性雰囲気の形成ハザード

液体取扱のハザード同定の

  • 液体蒸気による可燃性雰囲気の形成ハザード
  • 帯電ハザード
  • 放電ハザード

について順に説明する.今回は,液体蒸気による可燃性雰囲気の形成ハザードについて同定方法を簡単に示す.詳細は3章を参照.

チェック項目31 液体蒸気によって可燃性雰囲気が形成されるか

[ハザード]

  1. 事故事例(付録F)から静電気着火の70%以上は液体蒸気によって可燃性雰囲気が形成されていたので,可燃性液体の取扱工程および作業は静電気着火リスクが高い.
  2. 次の事項は可燃性雰囲気形成のハザードとなる:
    1. 空気に接触した液面
    2. タンク・配管系内の気相部への空気混入
    3. 液体が入ったタンクのマンホールや配管バルブの開放スイッチローディング
    4. 洗浄など揮発性液体取扱作業およびこの直後の作業

[確認事項]

    1. 可燃性雰囲気の調査
      引火点と液温**,LEL***,UEL,最小着火エネルギー
    2. 可燃性雰囲気を防止するために液温を純粋液体では少なくとも引火点の5℃以下に,また,混合液体では少なくとも引火点の15℃以下にする.
    3. タンクが直射日光にさらされ,液温をモニタ・管理していないときは,引火点60℃までのタンク内液体が可燃性雰囲気形成させるハザードがあると判断する.
    4. 引火点よりも十分に高い温度で液体を取り扱うとき,飽和蒸気濃度はUELを越える(over-rich)雰囲気を形成するであろうが,これのみで管理対策しない.

** 液温が引火点よりも高いときに着火するが,引火点よりも10℃から20℃程度高いときに着火しやすい蒸気濃度を形成する.したがって,トルエン(引火点6℃),酢酸プロピル: propyl acetate(引火点10℃),アセトニトリル: acetonitrile(引火点2℃)などは常温で容易に着火する.

*** LELの2倍程度の蒸気濃度の雰囲気が最も着火しやすい.