静電気着火ハザードの同定法 つづき
ハザードの抽出には事故事例が有効であるので,2.3および付録Fを参考にするとよい.
可燃性雰囲気でなければ着火は起こらないので,まず初めに,可燃性雰囲気形成のハザードについて調査・分析する.可燃性雰囲気形成のハザードがあるときのみ,静電気に関するリスク分析が必要となる.
次に帯電・静電誘導のハザードを同定する.この帯電・静電誘導ハザードをもとに着火性放電のハザードが同定される.放電タイプにより生起条件および着火性が異なるので,放電タイプごとにハザードを分析するようにしている.
静電気対策は十分に確立された安全技術であり,適切に静電気対策が実施されている場合は十分にリスクを低減していることになり,可燃性雰囲気が形成されたとしても着火する可能性は限りなく低い(リスクを十分許容できる)ので,詳細なリスク分析は省略できることになる.したがって,詳細なリスク分析は静電気対策が適切になされたか確認するとき,または,静電気対策が困難な事象に対してのみに必要となる.静電気対策が困難な場合にリスクを許容できるようにするためにリスクアセスメントを実施するときの支援としても本リスク分析手法を用いることができる.なお,静電気対策については9から13章に示している.
これらのハザード同定から,次のようにしてハザードレベルを求めるようにしている.
- 可燃性雰囲気形成ハザードレベル
- 可燃性雰囲気形成ハザードの同定で得られた可燃性雰囲気の着火性(Explosion group)と形成頻度(Zone)によって決定される.
- 帯電・静電誘導ハザードレベル
- 静電気放電ハザードレベル
- 静電気放電ハザードで同定された放電生起場所と放電タイプごとに,頻度と着火性(可燃性雰囲気の着火性との比較)によって決定される.
なお,各章のハザード同定の手順にしたがって調査すれば,上記の各ハザードレベルを決定するために必要な項目が自ずと求まるようにしている.