静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

液体の帯電

液体の帯電現象は,A.2.1(電荷分離による帯電)で説明した電荷分離によるものであり,液体--固体,液体--液体,液体--気体の界面で電気二重層が形成されている.この二重層は正・負どちらかの荷電粒子が選択的に界面に吸着することによって形成され,この荷電粒子はイオンである.

液体中の電荷密度はどのくらいなのか把握しよう.産業レベルの観測できる液体の電荷密度の最大は1000 µC/m3のオーダーである.電子の電荷(素電荷eは1.6 × 10-19 Cであるので,この電荷密度は電子密度として6.25 × 1015 m-3と等価である.代表的な液体中の分子密度は1028 m-3程度であり,たとえば,この液体の比重を1,分子量を100とすると,分子密度は6.02 × 1027 m-3となり,液体中のイオンの割合は10-12の程度でごくわずかである.

どんなに純度の高い絶縁性液体でも,この程度のイオン(不純物による*)が含まれていることは,導電率

\sigma = e (N_p \mu_p+ N_n \mu_n) = 2 e N \mu

が数pS/mという値を持つことからもわかる.ただし,イオンは一価の正・負イオンとして,N_p, N_nは正・負イオン密度,N_p = N_n \equiv N\mu_p, \mu_nは正・負イオンの移動度,\mu_p = \mu_n \equiv \muである.導電率を1 pS/m,移動度を10-8 m2V-1s-1とすると,イオン密度は N = 3.125 × 1014 m-3となり,電荷密度は50 µC/m3となる**.

液体の帯電は導電率に依存するので,ハザード同定には導電率の調査(4.4.2.1)が必要である.

* この不純物イオンとは,解離性のイオンであるが,何なのだろうか?この答えは未だに分からない.どなたかご教示ください.

** 導電率(静的導電率あるいは測定導電率)から求めた電荷密度以上に帯電するためには,さらに,正・負のイオンペアの発生が必要である.つまり,この導電率は,静的導電率よりも高くなることを示している.つまり,この導電率は,静的導電率よりも高くなることを示しており,導電率が変化しているので,オーミック(指数関数的)な電荷緩和でなくなる.また,指数緩和よりも早いことになる.いわゆるこれは,低導電率で起きるハイパボリック緩和となっている.これについては,後に触れることになるが,電荷密度から求まるイオン密度N_\rhoが静的導電率から求まるイオン密度N_\sigmaが大きい

N_\rho \gt N_\sigma

のとき,ハイパボリック電荷緩和になることを示しているようだ.