静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

沿面放電の生起場所

沿面放電の発生には相当量に帯電した電気二重層が形成されることが前提である.過大評価の沿面放電ハザード同定が散見されるので,沿面放電の発生条件を満たす絶縁層を慎重に抽出されたい.以下に生起場所を抽出するヒントを示す.

  1. 電気二重層ができる薄い絶縁層(シート状または接地導体面のコート(ライニングも含む))に生起する.輸送による物体の連続的な衝突などの相当量の電荷分離による帯電が必要である.
  2. 背面に接地導体がないシート状の絶縁層は,一方の面ではこのような電荷分離による帯電または絶縁性袋内の粉体等の帯電が必要であり,反対面では反極性電荷を蓄積させるイオンの発生(たとえば,コロナ放電)が必要である.したがって,この反対面ではこのイオン発生のための放電を生起させる接地導体(たとえば突起導体)がこの絶縁層近傍に必要となる.F.2.3.3も参照すること.
  3. 接地金属表面の絶縁性コート(たとえば,容器・配管)および導電性容器の絶縁性袋類に多い放電である.
  4. 沿面放電にはかなり高い表面電荷密度が必要なことから,大きく帯電した物体が相当量蓄積するか,表面電荷密度を高める何らかの帯電促進要因がない限り起きない.
  5. 粉体層では沿面放電は起きない(A.3.9.1)
  6. はく離の電荷分離の程度では2.5 × 10-4 C/m2以上の表面電荷密度と正・負逆極性の電気二重層の形成は困難であろうから,絶縁層のはく離では沿面放電は困難である.
  7. 接地導体表面の絶縁性コート・ライナー上の沿面放電の開始はコート・ライナーの表面電位が分かれば,式(A.22)により見積もることができる.