静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

接地導体表面の絶縁性コートからの沿面放電

沿面放電については,A.3.9に詳述しているので,これも参照すること.絶縁性シートおよび接地導体表面の絶縁性コート・ライナーなどの絶縁層で連続的に高く帯電する過程があると沿面放電のハザードとなる.帯電が比較的に高くなる粉体(高抵抗率の粉体)の工程に起こりやすい放電である.このような絶縁層で沿面放電を防止するためには次の少なくともひとつの対策がなされているか確認する.

  1. 薄いほど絶縁層の表裏に逆極性の電荷が蓄積しやすいので(表裏の電荷を打ち消しやすい),沿面放電は薄い絶縁層ほど起きやすい.絶縁層の厚さを厚くする.一般に,8 mmより厚いと起きない.ただし,ブラシ放電のハザードが生起するので,粉じんの可燃性雰囲気のみに適用できる対策であるが,粉じん以外ではA.3.13.1によって放電電荷を推定するとよい.
  2. 絶縁層の表面抵抗率または体積抵抗率を電荷消散性のレベルまで下げて接地する.このレベルは漏洩抵抗を1011 Ω以下となるまでに下げると十分である.
  3. 絶縁層の絶縁破壊電圧が4 kV以下となる材料を用いる.絶縁層が織物の場合は破壊電圧を6 kV以下とする.
  4. 粉体の空気輸送など連続的に絶縁層を帯電させて,絶縁層に高い帯電電位が誘引される工程・作業の方法を避ける.

 [リスク見積・リスク低減策] コート・ライナーの誘電率,厚さから求まる沿面放電の開始電位から沿面放電ハザードを評価できる(A.3.13.2参照).この開始条件を満たさない誘電率,厚さのコート・ライナーを使用すれば沿面放電は防止できる.

 

通常,手による摩擦は高帯電となる作業ではないので,手による摩擦ぐらいでは,沿面放電の発生のリスクは低いとして考えてよい.