静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

沿面放電について追加します

絶縁層の厚さが薄いほど絶縁層の見かけの静電容量が大きくなるので,同じ表面電位では表面電荷密度が高くなる.したがって,同じ電位であれば,厚さが薄いと沿面放電開始に必要な表面電荷密度の250 µC/m2以上になりやすい(A.3.9.1参照).また,厚さが薄い代わりに比誘電率が高い材料ほど静電容量が大きくなり,表面電荷密度が高くなるので,絶縁層の比誘電率が高いほど沿面放電になりやすいということになる.

つまり,沿面放電が開始するためには,表面電荷密度が重要であり,絶縁層の厚さ,誘電率,表面電位が分かれば,沿面放電開始の表面電荷密度になっているか否か,つまり,沿面放電が発生する可能性を推定できる.この関係を、実験的に求めたのが,A.3.13.2に示した式(A.22)である.

沿面放電を防止する方法の「絶縁層の絶縁破壊電圧が4 kV以下となる材料を用いる.絶縁層が織物の場合は破壊電圧を6 kV以下とする.」は,絶縁破壊電圧を低くして,沿面放電が起こる電位となる前に,絶縁破壊させて,それ以上帯電させない(沿面放電開始に必要な表面電荷密度までに帯電させない)ことにより沿面放電を発生させない対策である.絶縁層の厚さが薄くなれば,絶縁破壊電圧が低くなるので,実際の経験および実験[52]から,多くの材料で絶縁層の厚さを50 µm以下にすると,絶縁破壊して沿面放電の発生を防止できる(A.3.13.2参照).