静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

絶縁性固体の静電気対策ー除電

  1. 空気を何らかの方法により電離させて,生成したイオンの電荷により帯電した絶縁性物体の電荷を中和して除電する方法である.巨視的に見れば,空気の導電率がイオンにより高くなり,これにより電荷緩和しているのと等価である.
  2. 特に,絶縁性固体材料のプラスチックのシートやフィルムなどの帯電防止対策に利用されいる.
  3. 絶縁性物体の帯電を抑制する静電気対策のひとつであるが,危険場所では除電器のみでの静電気対策はしない.あくまでもほかの対策との併用が原則である.
  4. 着火防止の観点から除電器を用いる場合,自己放電式除電器でも危険な帯電レベル以下に抑制できる場合が多い.

[ハザード] 静電気対策である除電器も着火源となることがある.

  1. 除電器の安全性を評価する実験[16]で確かめられているように除電器が着火源になりうるので,危険場所で除電器を利用する場合は十分なリスクアセスメントが必要である.
  2. 除電器利用による着火リスクが評価されていなければ(IIC雰囲気における除電器利用は専門家による着火リスク評価を薦める),IICの可燃性雰囲気のZone 0, 1の危険場所での除電器の使用は避ける.
  3. Explosion groupにかかわらず,Zone 0では,除電器を唯一の対策として使用しない.
  4. 危険場所で除電器を用いる場合は,通気・換気などにより可燃性雰囲気の防止対策はもちろんのこと,防爆型の除電器の利用も有効である.
  5. 除電器の利用に当たっては,適切な設置,除電効果の確認および維持管理が必要である.
    1. 除電器はタイプおよび機種により性能が異なるので,対象の帯電物体に除電効果があるかの調査が必要である.物体の帯電特性は,電荷発生レートと電荷緩和レートによるので,これによって.必要な除電レート(電流)が決まる.
    2. 薄いシートなどの除電では,除電器によって両極性帯電を形成して,沿面放電のハザードとなるので,薄いシート状の絶縁物(袋,シートなど)の除電に用いる場合は帯電している面を除電するようにする*.
    3. 除電器の設置位置の誤りや電極の汚れなどのメンテナンス不備による除電効果の低下や異常放電の発生のおそれがある.定期的な維持管理が重要である.

* 反対面(帯電していない面)からの除電は,この絶縁性物体が強く帯電しているとき,除電する面に反極性の電荷を蓄積させて沿面放電の生起条件を生起させるハザードとなる.ロール工程などに適用する場合は,ローラとの接触面で電荷分離で帯電するので,シートがローラと接触した面を除電するようにする.理想的には,正・負イオンバランスがとれた除電器を用いて,両面同時に除電するのが望ましい[21].