静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

自己放電式(パッシブ)コロナ除電器

  1. 接地した尖った金属・細線(金属針,導電性細線など)を配置して,コロナ放電を発生させて帯電物体の電荷を除電する方法である.
  2. このコロナ放電は尖った金属・細線の近傍に空気を絶縁破壊させるほどに高い電界が帯電物体によって形成されているときにのみ起こるが,自己放電式除電器でも危険な帯電レベル以下に抑制できる場合が多い.しかしながら,使用する場合は除電効果について調査する必要がある.
  3. 導電性繊維を用いた布製品(作業着,シュート,FIBC,バッグフィルタなど)はコロナ放電による除電の効果もある.特に,粉体工程(粉体充てん,集じん等)において粉体の除電に極めて有効である.また,静電遮へい(シールド)の効果もある.(9.6.4参照)

[ハザード] 自己放電式除電器が着火源となるリスクは極めて低いが,次のようなハザードがあるので,利用に際しては確認する.

  1. 比較的に太い金属はコロナ放電よりも着火性が高いブラシ放電となるので,これを避ける.また,このような金属の接地不良は火花放電の原因ともなる.
  2. 沿面放電ハザードとなる可能性があるので,シート状の帯電物体は帯電した面を除電するようにする.
  3. コロナ放電はIICの可燃性雰囲気を着火する能力はあるので,リスクが評価(IIC雰囲気において除電を利用するときは,専門家による着火リスク評価を薦める)されていなければ,IICの可燃性雰囲気のZone 0, 1の危険場所での使用は避ける.
  4. 可燃性雰囲気にかかわらず,Zone 0では,除電器を唯一の対策として使用しない.
  5. 帯電物体の電位が負に数十kV程度以上では,コロナ放電が正極性コロナ放電となりブラシ放電が生成するおそれがあるので注意する.IIA, IIBの可燃性雰囲気でも,Zone 0の危険場所に設置する場合は,負に大きく帯電した物体の存在と使用する電極による着火性ブラシ放電の可能性があるかを調査する.
  6. 粉じんの危険場所では,ブラシ放電でも着火することがないので自己放電式除電器による着火リスクは十分に低い.