静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

静電気着火リスク見積

これまで示した可燃性雰囲気形成ハザード,帯電および静電誘導ハザードおよび静電気放電ハザード同定をもとに着火リスクを見積り,評価をする.

工程・作業のレビュー(2.1.1.1)をもとに,図7.1に示すように,可燃性雰囲気形成ハザード同定で得られた可燃性雰囲気形成ハザードレベル,帯電および静電誘導ハザード同定で得られた帯電・静電誘導ハザードレベル,および,静電気放電ハザード同定で得られた静電気放電ハザードレベルからの静電気着火ハザードレベルが求める.つぎに,この静電気着火ハザードレベルとこのハザードによって誘起される危害のひどさを考慮し,総合的に判断して静電気着火リスクが見積もられる.

可燃性雰囲気形成ハザード,帯電・静電誘導ハザード,静電気放電ハザードで同定された各場所に対して各放電タイプごとに静電気着火リスクを見積もる.

リスクレベルは(可燃性雰囲気形成ハザードレベル) ✗ (帯電・静電誘導ハザードレベル) ✗ (静電気放電ハザードレベル)の乗算(いわゆるEvent tree analysis)により得られる静電気着火ハザードレベルと危害のひどさA—Cの組み合わせで決定する.なお,危害のひどさは人災・設備被害および経済的損害に関して

  1. A(人災:死亡,設備被害および経済的損害:重大)
  2. B(人災:重傷,設備被害および経済的損害:大)
  3. C(人災:軽傷,設備被害および経済的損害:軽微)

の3段階が妥当であろう.このとき,この3つひどさのレベルがそれぞれに異なる場合はもっとも高いひどさにする.したがって,静電気着火リスクレベルは,たとえば,静電気着火ハザードレベルが100で,危害のひどさがAのとき100Aとなる.なお,このA, BおよびCについても数値化すれば危害のひどさも含めたリスクレベルを求めることができる

いずれかのハザードレベルが0となるときにリスクレベルが0となるが,この意味は,リスクから解放されているのではなく,リスクが許容できる,または,静電気対策が的確に実施されて,許容できるまでに低減していることを示している.

通常,このリスクレベルは,作業頻度を考慮して,たとえば,年間の時間が1000 h/y以上,100 h/y以上,10 h/y以上,10 h/y未満のように分類して係数を掛ける方法を用いることが多いが,事故事例分析からメンテナンス作業などの頻度が少ないほど事故が多いので,この作業頻度を考慮するとリスクの過小評価となってしまう.したがって,工程・作業の頻度をあえて考慮していない.

見積られたリスクレベルは対策するかしないかの意思決定と対策の優先順位にも使用できる.求められるハザードレベルの値は,最低が0を除いて2,最大が800と広い範囲にあるので,意思決定のための優先順位は現状の方法でも十分であった.