静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

着火性の調査

放出源として特定された工程・作業等で取り扱う可燃性物質・製品について以下の燃焼特性の事項を調査して,物質・製品の静電気による着火可能性を調査する.

チェック項目3 爆発(燃焼)限界(下・上限界: LEL, UEL)濃度の調査
チェック項目4 最小着火エネルギー(MIE)の調査

チェック項目5 引火点の調査

おもなガス・蒸気の爆発範囲,最小着火エネルギーおよび引火点は付録Gを参照されたい.これには粉じんについても記載されているが,粉じんの着火性は粒径に大きく依存するので参考程度にして現物をもって測定すること.

調査のため最小着火エネルギーを測定する場合は,熟練を要すのでエキスパートによって測定されなければならない.また,粉じんの最小着火エネルギーを測定する場合は,静電気着火リスクを評価する試験法に準じて測定されなければならない.通常のままのインダクタンスを用いて測定すると着火エネルギーが低くなり静電気着火性が過大評価になることが多い.

混合ガス・蒸気のLELおよびUELは付録Cによって見積もることもできるが,LELおよびUELのデータがないときはできる限り測定で求めることを薦める.

一般に,LELおよびUELは空気中のデータが示されているので,酸素中など異なる場合は,測定または限界酸素濃度で可燃性雰囲気の形成ハザードを同定する.限界酸素濃度の見積を付録Cに示す.限界酸素濃度のデータは付録Gに示している.

可燃性粉じんの場合,可燃性雰囲気がハイブリッド(ガス・蒸気を含むもの)であると,粉じんのみのときよりも着火エネルギーを低くするので注意する.対象の着火エネルギーを測定するのが前提であるが,ガス・蒸気の濃度がガス・蒸気のLELを超える雰囲気ではガス・蒸気の最小着火エネルギーでリスク分析をしてもよい.

引火点は液体蒸気によって可燃性雰囲気が形成されるかの指標に用いられる.詳細はC.1も参照されたい.引火点は,液面で可燃性雰囲気を形成するために必要な液体温度の最小値を示しているといってもよい.可燃性液体蒸気・空気の平衡混合気では,引火点の10〜20℃以上で最も着火しやすい条件となる.適用する引火点はできるだけ取扱条件に合った測定法(開放または密閉式)を用いたものにする.管理された条件下で液体温度が,純粋液体では引火点の少なくとも5℃以下,また,混合液体では引火点の少なくとも15℃以下であれば可燃性雰囲気形成ハザードは出現しないとしてよい.ただし,液体が噴霧・噴出される場合は,最小着火エネルギーの10倍程度以上のエネルギーを要するが,引火点以下でも着火することがあるので注意する.

この段階で可燃性雰囲気の形成が不可能と判断できた場合は静電気による着火リスクはなしとなる.これは,図2.2の第1番目のifダイアグラムのnoの矢印に相当する.可燃性雰囲気と静電気着火源が共存する可能性を許容できる防護手段,たとえば窒素パージ,を採用している場合も同様に着火リスクなしとなるが,この防護手段(対策)が不備となる要因と可能性を調査し,そのリスクが許容できると判断されなければならない.