静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

可燃性雰囲気形成の可能性(場所・範囲の特定)

ここでは,3.2 放出源の特定と3.3 着火性の調査で洗い出された可燃性物質とその着火性の調査から,実際の工程・作業空間に可燃性雰囲気が形成する可能性を調査し,その場所・範囲(危険場所)を特定する.

チェック項目6 爆発範囲の濃度となる可燃性雰囲気が工程・作業空間に形成されるか

チェック項目7 その可燃性雰囲気が及ぶ範囲は(可燃性雰囲気の場所と範囲の特定)

3.3で調査した可燃性物質を放出源として爆発範囲となる,特にLEL以上の濃度の可燃性雰囲気が工程・作業空間に形成される可能性を調査して,可燃性雰囲気となりうる危険区域(危険場所)を決定する.可燃性雰囲気の形成とその範囲を決定するファクタとして以下の事項を調査する.

  1. 爆発下限界濃度LEL
  2. 放出源の特定
    • 放出源の位置
    • 放出源の形状(開放部の面積)
    • 放出源の保有量(可燃性雰囲気の継続時間)
    • 放出源が液体の場合:液温,沸点,蒸気圧,引火点
    • 粉じんの場合:粒径分布(粒径が小さく軽いほど粉じん雰囲気が形成しやすい)
  3. 放出の範囲の決定
    • 放出源の濃度と放出速度(可燃性雰囲気の範囲)
    • 空気との密度比(空気より重いか軽いか)
    • 換気(自然換気,強制換気)

この調査で,可燃性雰囲気形成が不可能と判断できた場合は静電気着火リスクなしとなる.

 

現場に照合させた放出源の特定

可燃性雰囲気の形成には空気(酸素)と可燃性物質を必要とするので,3.2で洗い出された放出源をソースとして,工程・作業場所に空気(酸素)と混合して爆発範囲になりうるか判断することが必要である.

 

放出の範囲

同定された放出源をもとに可燃性雰囲気が拡がる範囲を同定する.

理想的には測定や計算・シミュレーションにより可燃性雰囲気の範囲を同定すべきであるが,経験的な方法(付録C.7)によって求めてもよい.

可能であれば,この可燃性雰囲気形成の同定はその場所での濃度測定がベストである.工程・作業場所での事前のサンプリング測定で行うのがよいであろう.蒸気の場合は温度に,また,測定場所が室外の場合は空気流(風)の影響を受けるので同定にはこれらを考慮する.なお,この測定が着火源にならないように測定のためのリスクアセスメントも必要である.さらに,可燃性物質または酸素の濃度の常時モニタリングはリスク低減策となる.

工程・作業の設計段階での空間濃度の見積もりには市販のソフトウエアの利用など数値解析も有効である.

測定や計算・シミュレーション解析は理想論である.これらの解析をもとに得られた経験的な可燃性雰囲気の範囲(危険場所の範囲)を示したIEC 60079-10-1 [7]の例を付録C.7に示すので,これを参考にして可燃性雰囲気の範囲を求めるとよい.