静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

駆動ベルト

[ハザード]

プーリを介して動力を伝達する駆動ベルト(フラット(平)ベルト,Vベルト)は,エンドレスベルトとプーリの接触面で連続的な電荷分離があるので帯電ハザードがある.帯電量は,ベルトの材質に依存し,ベルトの速度,張り,接触面積の増加とともに大きくなる.

ベルトの汚れによりベルトの帯電性や抵抗が増加すると,帯電ハザードの可能性がある.

ベルトの接合に使用される絶縁性接着剤の層やベルトコネクタの使用は,電荷緩和の導電経路を妨げる可能性がある.

[リスク低減策]

ベルトが電荷消散性であり,接地された導電性プーリを用いれば,ベルトに発生した電荷はプーリを通して接地に緩和される.

ベルト駆動には,次のような静電気対策があるので実施されているかを確認する.コンベアベルトと同様に接地した導電性プリ—と電荷消散性ベルトの利用による帯電抑制が原則であり,そのうえに可燃性雰囲気とベルトコネクタの有無に依存してベルト速度を制限して帯電を抑制する静電気対策である.

  1. 接地プーリでの電荷緩和による帯電抑制
    1. 電荷消散性ベルト**の使用により帯電を抑制する.このとき,プーリを通してベルトを接地する.
    2. ベルトの汚れやベルト接合により,電荷緩和の性能が低下する可能性があるので注意する.
  2. ベルト速度による帯電抑制
    1. Zone 0; Zone 1 (IIC)の危険場所
      1. 電荷消散性ベルトであっても,ベルト駆動は使用せず,ダイレクトドライブにするのが原則であるが,やもえず,ベルト駆動する場合は,以下のようにする.
      2. ベルト速度を0.5 m/s以下にして,電荷消散性ベルトを使用し,プーリを通してベルトを接地する.ベルトコネクタ使用不可.
    2. Zone 1 (IIA, IIB); Zone 20 (MIE>10 mJ); Zone 21の危険場所
      1. 電荷消散性ベルト・接地導電性ローラ
      2. ベルト速度5 m/s未満(ベルトコネクタあり)
      3. ベルト速度30 m/s以下(ベルトコネクタなし)
    3. Zone 20 (MIE≤10 mJ)の危険場所 
      1. 電荷消散性ベルト・接地導電性ローラ
      2. ベルト速度5 m/s未満(ベルトコネクタ有無にかかわらず)
    4. Zone 2; Zone 22の危険場所
      1. 着火性放電ハザードがなければ,電荷消散性ベルト・接地導電性ローラ使用,ベルトコネクタなしの要件はなしでもよい.
      2. ベルト速度30 m/s以下

ここに示した駆動ベルトの静電気対策に必要な要件をまとめると表¥ref{tab:belts}のようになる.

** ISO 9563 [27]およびISO 1813 [28]に従って測定された抵抗R が, RB / L \le 6.0 \times 10^5\ \Omegaのとき電荷消散性ベルトと定義する.ただし, R: 駆動ベルト上の2つの電極間の測定抵抗, L: 駆動ベルト上の2つの電極間の距離,[tex B]: 電極との接触幅に相当し,フラットベルトの幅またはVベルトの側面の幅の2倍である.静電気安全指針2007 [2]および静電気安全指針2007で参照したCLC/TR 50404 [5]では, ベルトを取り付けた状態で測定された抵抗 Rが, RB \le 10^5\ \Omega \textrm{m}のとき電荷消散性ベルトと定義する.ただし,R: 両側のプーリの中心でプーリが接触するベルトの側面に配置した電極と接地プーリ間の抵抗, B: フラットベルトの幅またはVベルトの側面の幅の2倍である.この電極とベルトの接触の幅は Bに等しい.また,ベルトが異なる材料の層からなる場合は,この層間の抵抗が10^9 Ω以下であるとき電荷消散性ベルトと定義する.後者の条件RB \le 10^5\ \Omega \textrm{m}は, Lをベルトを取り付けた状態でベルトの中心から接地プーリと接触するまでの距離として前者条件に適用したとき, RB / L \le 2.4 \times 10^6\ \Omegaと等価となる.ただし,両方のプーリが接地されているとした.