静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

工程・作業のレビュー

可燃性物質を取り扱うプロセス・工程・作業は多種多様である.したがって,ハザードが生起する条件もプロセス・工程・作業の条件,手順および環境などに依存して多種多様となる.まずは,リスクアセスメントの対象となる工程・作業の設備,プロセス・工程条件,工程・作業の手順,使用する物質・用品・用具および環境を調査(レビュー)する必要がある.静電気に関連して調査すべき事項は2.2の「着火リスク分析に把握しなければならない事項」を参考にするとよい.帯電量は,帯電物体の量に依存するので,取扱量,帯電物体が蓄積するであろう容器等の大きさも重要な調査項目である.

このレビューによって,引き続き実施されるハザード同定(可燃性雰囲気形成,帯電,静電誘導および静電気放電のハザード同定)に必要なデータが収集されていることが望ましい.

ISO/IEC Guide 51 [1]のリスクアセスメントのフローの第一ステップである``意図された使用を特定し,合理的に予見可能な誤使用を評価する: Definition of intended use and reasonably foreseeable misuse''を静電気リスクアセスメントに対応させると,この工程・作業レビューをもとに静電気対策が的確になされているか,また,合理的に予見できる静電気対策からの逸脱はないか調査することになる.この合理的に予見できる静電気対策からの逸脱に多い事例は製品の品質保持のため避けることができない絶縁性材料の利用(絶縁性または絶縁性コートの容器・配管や絶縁性袋・内袋など)である.さらに事故調査結果(付録E)から,静電気を軽視した管理的なヒューマンエラーが原因となる場合も無視できない.なお,静電気安全指針2007 [2]や海外(BS 5958-1 [3], NFPA 77 [4], CLC TR 50404 [5])・国際規格(IEC 60079-32-1 [6])で示された静電気対策は合理的に許容レベルにリスクを十分に低減できる.ガイドには,これらの規格を網羅した最新の静電気対策を示している.

この段階で静電気対策が的確に実施されていると判断できる場合,静電気ハザードは合理的に無視できると決定してもよい.その場合はその対策の内容と無視してよいと判断した根拠を記録に残す.さらに,その対策が不備となる可能性(確率)とそのときのリスクも見積る必要がある.指針・規格等に示される静電気対策(リスク低減策)は十分に許容できるほど(ALARPレベル)にリスクを低減する信頼できる安全技術であるので,この判断は静電気対策の管理の信頼性が鍵となる.

この工程・作業レビューの結果は,表2.2の静電気リスクアセスメントシートの工程・作業レビューの部にまとめられる.ここにはハザード同定に必要な事項の概要(工程・作業手順,使用する設備・材料・可燃性物質・用具,実施している/する静電気対策等)とこのレビューで行われた調査結果を記入される.

なお,リスクアセスメントシートのスプレッドシートファイルはダウンロード 可能です.