静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

静電気リスクアセスメントーこれを始めたきっかけ

リスクアセスメントの法的義務化

いまやリスクアセスメントは事故未然防止の安全技術として安全管理のためのグローバルスタンダードになっており,我が国でも2006(平成18)年4月の改正労働安全衛生法の施行により,リスクアセスメントの実施が明示され,2014(平成26)年6月の労働安全衛生法の一部を改正する法律(2014年法律第82号,2016年6月施行)により,ここに定められた640種の物質については,リスクアセスメント(危険性または有害性の調査)を実施することが義務となった.

静電気では

静電気による災害の未然防止においてもリスクアセスメントは重要であることは当然であるが,静電気の基礎がないとその的確な実施は不可能であるので,リスク分析の支援となる静電気リスクアセスメント手法を開発することにした.活用される現実的な手法を開発するために,現状の静電気リスクアセスメントの実態をアンケート調査および欧州も含めた現場調査により把握することから始めた.さらに,50年にわたる事故を分析し,過去の事故傾向を調査し,事故にみる静電気ハザードの傾向も把握した.これらの調査結果を踏まえて国際規格のISO/IEC Guide 51の流れに沿った科学的・系統的・網羅的な静電気リスク分析手法を開発している.開発手法は現場運用を積み重ねることによって,適宜に必要な修正を施しながら,その妥当性が検討・確認されたものです.

静電気のリスクアセスメント

静電気による災害は,静電気放電による着火が原因である.この静電気放電は何らかの原因により静電気(電荷)が蓄積して(これが帯電である),空気の絶縁破壊電界以上の電界が形成されるときに起こる.この放電が可燃性ガス,蒸気または粉じんと空気(酸素)で構成される可燃性雰囲気内で起こり,時空間的に実効的なエネルギー輸送量がその雰囲気の最小着火エネルギーを超えるときに着火が起こる.このように着火するためには,可燃性雰囲気の形成と十分な着火エネルギーを有した静電気放電が不可欠である.つまり,静電気着火を誘引するハザードは可燃性雰囲気の形成,帯電とこれによる着火性放電の発生であり,これらのハザードのうちひとつでも防止できれば着火リスクは十分に低減できる.これが静電気対策,すなわち,リスク低減策であり,十分に確立された安全技術です.

支援技術

静電気リスクアセスメントを適切に実施するためには,静電気着火に至るハザードを抜けがなく同定することが重要であり,同定されたハザードによるリスクを適切に見積・評価する必要がある.さらに,これらのリスクの低減は,可燃性雰囲気の形成を防止する,静電気放電の原因となる帯電を防止する,または,着火性放電を防止することによってなされるので,対応する静電気対策を適切に実施しなければならない.このためには静電気現象の基礎を理解している必要もある.この手法をまとめたガイドにはこの基礎の解説も含めて静電気リスクアセスメントを確実に実施するための手順を提案している.通常のリスクアセスメントでは各分野のエキスパートが結集してこれを実施している.静電気のハザード同定,リスク見積または静電気対策が難しい場合はエキスパートの支援を求めることを薦める.相談にも応じます.本手法とガイドが,事故未然防止のための静電気リスクアセスメントを適切に実施する支援となることを願います.