静電気イノベーションズ

静電気リスクアセスメント,ハザード同定,静電気対策のこと...

リスクアセスメント

リスクとは

リスクとは,多くの辞書にもあるように,単に危険という意味として日本語に訳すこともできるが,ISO/IEC Guide 51(規格等の作成者が規格等に安全面を導入するためのガイドである. ISO/IEC Guide 51 Safety aspects-- Guidelines for their inclusion
  in standards, Second edition}, 1999.)にあるように安全分野での定義は「危害の発生する確率および危害のひどさの組合せ」である.この危害とは人的な損害,設備などの財産の損害あるいは環境に対する損害などを表している.静電気安全分野での「危害の発生する確率」とは静電気によって火災・爆発という危害が発生するわけであるから,「静電気着火リスク」は「静電気危険源(ハザード)が生ずる確率およびそれによる損害の組合せ」に置き換えることができる.したがって,静電気着火リスクはこれを見積もることによってなされる.

 

リスクアセスメント

ある工程や作業のリスクアセスメントをするとき,科学的,網羅的にハザードを同定する作業から開始する.このハザード同定にはその工程に係わる全員が参加するべきである.このプロセスでは,かなり多くのハザードが抽出されるであろうが,すべてに対してリスク見積・評価をしなくてはならない.また,その工程に係わる全員が参加するので,見落としを少なくすることも可能であり,施したリスク低減策(静電気対策)の意味が良く理解でき,安全意識が高まる(安全文化の醸成)という効果もある.次に,同定された一つひとつのハザードにより生ずるリスクを数値的に見積もる.このガイドに示した手法では,対策の優先順位を決定できるように,ハザードレベルとして数値化し,ハザードの組合せで決定される着火リスクも当然に数値的される.この二つのプロセス(ハザード同定とリスク見積)をリスク分析という.このリスク分析に基づいて許容可能なリスク(tolerable risk)であるかどうか,リスクの評価を行い,そうでない場合は許容可能なリスクとなるまでリスク低減策を講ずることになる.リスク低減策を講じた後の残存リスクについても同様にして検討する必要がある.以上のプロセスがリスクアセスメントであり,図1.1のようにまとめられる.

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図1.1 リスクアセスメントの手順

実際には,これまでもこのリスクアセスメントに似たようなことは行われていると思うが,科学的にかつ網羅的に予めハザードを同定し,そのリスクを見積・評価し,リスクの高い順に許容できるリスクになるまでリスク低減策を系統的に行うので,合理的,効率的で,また,経済的でもある.

さらに,リスクアセスメントの作業はすべて記録されようにしているので,万一,災害が生じたときの説明責任も容易に果たすことができ,事故原因の究明と再発防止対策にも大いに役に立つものである.